神様になりそこねの、人でなしの〜蛭児神建

Aug28~01
蛭児神建を語るとき、小説を書く人として語る人がどれくらいかでもいるかなぁと、ボンヤリ考えていた。特異な風貌で、変質者のコスプレ。ロリコン大全集の編者、特殊なロリコン誌、プチパンドラを作り後に僧侶になる。さまざまな伝説がある初期ロリコン界のスタァ。
蛭児神建は、埼玉の土建屋の息子として生まれる。宗教に夢中な父母とは折り合いが悪く、家業を継げるようにと入った建築設計系の専門学校は不器用で烏口を使えず、真っ直ぐな線を引くことが不得手だった彼にとっては苦行そのものだった。もっとも料理やぬいぐるみを作るなどの工作は得意だったとも聞く。絵もあまり上手くはないがずっと描き続け、「蛭児神の絵」と絵柄が確立していたので今思えばたいしたものだ。専門学校在学中に漫画画廊に出入り、ロリコン文芸誌を作るあたりの履歴はご存じの方も多いと思う。
当時の本人は割と気さくでさまざまな会合にも顔をだし、同人誌原稿も快く書いてくれていたようだ。変質者コスプレは模倣者が出た事もあり、ロリコン大全集発行後の割と早いうちに解除していた。ちなみにトレンチコートが蛭児神、模倣者蛭児神ファンクラブの黒猫が、白衣。黒猫の評判の悪さは今に至るまで聞こえてくるが、生理的にキモチワルイ、以外の具体的な被害は聞いていない。蛭児神は、青白い顔色で茶髪(天然)の長い髪、黒っぽい服といういで立ち。男性にはなぜか「いい男だ」と評判が高かった。足が悪いわけでもないのに杖を持ち、コミケ会場で足を引きずって歩くなどの悪趣味なところもあった。
蛭児、は神様の最初の子。足萎えで海に流されたと言い伝えがある神様になれなかった忌み子。別名の夷、もまたペンネームに使っている。よく間違われる建は人偏がつかない。建築科卒、ということと人でなし、をかけているのだそう。
神様になれなかった人でなし、は蛭児神をよく表している。
Aug28~02 Aug28~03
80年代半は、本人が出していた無惨小説の同人誌「幼女趣向」が大量に売れ残っている一日体制の頃の晴海コミケスペースを見たことがある。ああ、この人の時代終わったんだな、と感じた。まだパンドラが発刊される前のこと。
小説家志望ということだったが、雑誌ではプチパンドラ以外には小説掲載は殆どない。当時のサブカル出身のライターたちと比べても引き出しが少なく、本人曰くの「ロリコンしか取り柄のない三流ライター」という判断が正しいだろう。
もとより、ロリコン小説で家が立つような場面は誰の上にも訪れなかった。大体ロリータ主義のエロ小説が、もてはやされたことなんてあったろうか?
無論初期のいざないで、富士見ロマン文庫の「ペピの体験」や「少女ビクトリア」「鏡の国のアリス」はチェックしていたとしても、美少女漫画と同じ土俵で語られるような和製美少女エロ小説は、果たして存在したのだろうか。
不勉強ゆえ、ありますよーと言われたらゴメンナサイ!という感じだが、少なくとも「どうせ亜流誌、みんなでレミング」というほど群れを作っていたとは思えない。
美少女マンガ誌に多くあったのはサブカルよりのコラムで、添え物的であったと思う(無論質が低いという話ではない)。
執筆以外は行っていないロリコン大全集の「監修」扱いに不満のあった蛭児神は、自分でやりたいことができる編集長という立場のパンドラでやりたいことをやろうとした。自身の小説を載せ、コラムを書き、欄外にうるさいほどのアオリを入れる。作家もコロコロと変わる。交流がうまくいかないと前号に書いていた作家の悪口を書く。素人丸出しの作り。当たり前だが雑誌編集というのは甘いものではない。売れ行き不振と販売延期を繰り返す。大体光彩書房、一水社はゆるいというかいい加減というか、通常の雑誌なら4、5号続いたところで休刊が関の山だったはず。ただし雑誌コードを与えずムック扱いだったあたりはわかっていたというべきか。
蛭児神曰く、引退して僧侶になったのは、この頃のなあなあな作家の執筆態度に嫌気がさしたことも関係していた、とある。
当時蛭児神は実家の二階に居を構え、複数作家を緩やかに缶詰にしながらパンドラの原稿を書かせている。缶詰というくらいだから切羽詰まっているはずなのに、なぜだか入稿してもパンドラは出ない。更に追加で原稿依頼があったりする。いつ発行されるか、と聞いてもごもごもと口ごもる。本が出なければ当然原稿料は出ない。稿料がいつもらえるかわからない雑誌に執筆したい物好きはどんどん減っていった。やんわりと執筆拒否したり依頼をフェードアウトしたりする作家はかなり多かった。挙げ句に欄外で嫌味を書かれたりする。最終的に残ったのは和光大学漫研の面々などごく一部のあまりお金を気にしない作家のみであった。全て身から出た錆である。
たまに蛭児神の話題が出ると「いまどうしてらっしゃるんでしょう?!」と色めき立つ人もいるが、元蛭児神建、として漫画の手帖に不定期連載中で健在である。
漫画の手帖は、初期FP.のロリコン特集で蛭児神を持ち上げた一員とも言える。最後まで神輿を担ぐ気概を見せているのかもしれない。今の元蛭児神は、愛妻の話と病気の話と宗教の話とおジャ魔女ドレミのおんぷちゃんの話の4種類のレコードをとっかえひっかえかけ続けている。晩年の武者小路実篤のグルーブ感はないもののそろそろループがきつくって、バターになりそう。仲良きことは美しき哉。様子はぜひご自身でお確かめいただきたい。
10月1日追記 
漫画の手帖86号によると、(元)蛭児神氏の奥様が去る7月に急逝なさったとのこと。ご冥福をお祈りいたします。
スポンサーサイト



comment

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

mujinabook

Author:mujinabook
本棚から本を引きずり出してひっそり紹介しています。概ね販売物です。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR